前回の記事でも取り上げましたが近年では電気の使用量が発電能力の限界近くまで上昇することがあり「エアコンの温度を控えめに・・・」なんて呼びかけもたまに聞きます。
じゃあ発電の限界ってなに?といわれるといまひとつピンとこないですよね。
まず電気は発電する量と使用する量が常時一致(同時同量)していなければならないという基本があります。
そのために発電所では使用量に応じて発電量を調整しています。
この調整は太陽光や風力が不得意とするところなので火力や水力など昔からある発電所で行っていると思います。
もしその需給バランスが崩れるとどのようなことが起こるかというと、
火力や水力などの発電機は1秒間に50回転や60回転という速さを維持して回っています。
それがいわゆる周波数と呼ばれる50Hzや60Hz(地域によって日本では2つにわかれています)になっているんですね。
しかし使用量より発電量が多いと発電機の回転が速くなり周波数が高くなってしまいます。
逆に使用量が増加し発電量が不足すると回転が下がり周波数が低くなります。
周波数の乱高下は特に産業用のシステムに悪影響を与えるのでご法度。
使用量が発電能力の限界を超えて周波数が下がると保護装置が働き連鎖的に発電所が停止して広域停電(ブラックアウト)なんてことになりかねません。
それを防止するため電力会社同士で電力を融通しあったり、ある地域を停電(これも困りますが)させて発電を維持するようになっています。
ここでふと「なんで発電量が不足すると周波数(回転)が下がるの?」「発電機は一定に回るように一定の燃料や水を供給すればいいのでは?」という疑問を持たれるかもしれません。
ということで、
ここに磁石と電線の図を用意しました。

磁石の磁界は手前のN極からS極へと向っています。(理科で習いますね)
その磁界中へ銅の電線を配置していますが、その両端には何も接続されていないため銅電線は磁石に吸い寄せられることもなく自由に動かすことができます。
次に銅電線の両端から配線を伸ばして電球を取り付け上方向へ移動させると

このように電流が流れ電気が起きます。
これも立派な発電ですね。
実際にはこの程度で電球が点くこともないでしょうが😅
このときの電流の向きは学校で習ったことがあるかもしれませんが”フレミング右手の法則”

これでわかります。
力は電線を動かす方向、磁界はN極からS極への磁界の向き、電流は発生した電気が流れる方向。
電線を上下方向ににあげたりさげたりすると電流の向きが反転して交流が発生します。
1秒間に50回できれば50Hzですね😆そりゃ無理だ。
発電機はこれをもっと複雑にして回転運動で連続しているわけです。
それはさておき、先ほど上方向へ電線を移動したときに電気が発生し電流が1方向へ流れたわけですがここでもう一つ忘れていはいけません。
それは”フレミング左手の法則”

もしかしたらこちらのほうが一般の方でも知っているかもしれませんねぇ。
これは磁界中の電線に電流を流すとその電線に発生する力の方向を表しています。
要はモーターの原理のことです。
この法則を先ほどの電気を起こした図に当てはめてみると

このように上方向へ移動する電線を下方向へ妨げようとする反対方向の力になって働き移動が重くなります。
発電に力がいるのはこのためです。
電流(発電量=電気の消費量)が多くなればなるほどその力もどんどん増してきます。
発電機はただ単に回していればよいというわけではなく、その発電量に応じて燃料を増やしたり、その他の制御で一定の回転を保つ(発電量と使用量が同量で釣り合っている)必要があります。
いくら燃料などを投入しても逆方向に発生する力に負けて回転が落ち始め周波数が下がったときは発電能力の限界を超えたということでしょう。
そうならないためには電力融通や節電要請、長期には発電所の増設などを行う必要があります。
しかしあまり太陽光や風力による発電を増やすと気象による乱高下で制御不能になり電力の安定供給に支障が出るかもしれませんね。
話は変わりますが、よく車などでいろいろな電装品の使用やスマホの充電などをして電気代がタダと思っている方がいるかもしれません。
効率は別にして車(ガソリン車など)もエンジンで発電機を回しているので電気負荷を接続すればそれだけエンジンに負荷がかかり燃料を多く消費することになります。
停止中のアイドリング時にヘッドライトなどを点灯するとエンジンの回転が一瞬落ち、その後燃料を増やして戻るのが回転計でわかります。
都合の良い永久機関は世の中に存在しないということですね。

http://kato-aircon.com/