隠ぺい配管はやめたほうがいい
壁掛け型ルームエアコンでのこと。
家を建てるときに設計サイドから建物の外観を損ねない等の理由でエアコンは”隠ぺい配管で”と勧められることがあると思います。
でもちょっと待ってください。
見た目だけで施工方法を決めると後でたいへんな思いをするかもしれませんよ。
ここで”隠ぺい配管”とは何ぞや?と思われた方へ・・・
隠ぺい配管は別名で埋設配管とか先行配管とも呼ばれて壁内、天井内、床下にあらかじめパイプを配管しておき、建物竣工後にエアコン本体を取り付けそこへ接続する方式です。
パイプがほとんど見えずすっきりとした仕上がりになるところが売りです。
日本がバブルの時は隠ぺい配管が当たり前のように行われていたわけですが・・・
その後10年20年と時が経ちエアコンが壊れ始めます。
新品に交換しようと思ったら工事を断られてしまいどこへ頼んでいいものかと悩んでおられる方も多いのでは。
泣く泣く諦めて電源増設工事と露出配管で施工したというケースも多発しています。
ではなぜ工事を断られるのでしょう。
― 銅管が再利用できないケース ―
エアコンの冷暖房に欠かせない銅管。
この中には冷媒ガスが流れています。
しかし金属であるがために経年劣化と共に工事をするたび硬化して融通が利かなくなり、果てには折れてしまいます。
またエアコン本体によって異なる接続位置で中途半端に足りなくなり接続が難しくなることもあります。
そのほかには現在の新冷媒は旧冷媒より高圧なため銅管自体が対応していないケースもあるでしょう。
― 電線が短いケース ―
これは量販店などで入れ替え工事を断られる一番の理由のようです。
電線は内外連絡線と呼ばれ室内機と室外機を結び電源供給と信号のやりとりをしています。
隠ぺい配管ではエアコンを取り付ける時にその本体に合わせて電線をカットするので別のエアコンでは短くなってしまうことがよくあります。
こうなると接続延長しなければ使用できません。
この連絡線は電気設備技術基準や内線規程に沿って施工する必要があります。
しかし電気とは畑違いの工事人が多いエアコン業界では電線をテキトウに接続してそのまま壁の中に押し込んだり、パイプと一緒にテープで巻いてしまい火災の原因となりました。
そこで経産省などから量販店などへ通達があったようで今では電線接続延長を断っているようです。
メーカーの据付説明書にも途中接続禁止となっていますが、そもそも電気工事士の資格を持った者がしっかりとした工事をしていればこのような注意書きは必要なかったと思います。
経産省から量販店などのエアコン工事人はまともな電気工事ができないとレッテルを貼られてしまったようなものですね。
以上により多くの業者は連絡電線を接続延長しなければならない場合工事を断ります。
(当店は安全な接続が可能であれば行います)
― ドレンが再使用できないケース ―
これは隠ぺい配管を施工(埋設)した業者が適切な方法をわかっていないことによるもの。
ドレン管は室内機から出る結露水(除湿した水)を排水するためのものです。
壁内に埋められたドレン管
先端しか見えませんが本来このような塩ビ管を使用します。
これは水道用のVP管。
業務用エアコンのドレン管としても多用されています。
ここへ室内機から出ているドレンホースを差し込みます。
昔から据付説明書にもこのように塩ビ管を室内機裏に立ち上げて差し込む方式が出ているのでこれが基本方式といえるでしょう。
もちろん管の太さも大切。
通常は室内機近辺をVP管の30というサイズで行います。ひとつ下の25というサイズではドレンホースの断熱材を取らないと差し込めません。
断熱ドレンホースは塩ビ管と異なり壁内などに埋設するのが非常に楽なんです。
そこで”速さ”と”楽”を追求する業者は好んでこれを使うのですが・・・
この断熱ドレンホースは公的な規格品ではありません。
ホースを販売しているメーカーの独自規格品。
そしてこのホースは専用の接続部品を使用します。
これはそのうちの一つですが、このようなものを断熱ドレンホースに接着してから室内機のホースなどと差し込み接続するようになっています。
ちなみに隠ぺい配管ではこのような通常の接続はほぼ不可能。
そこで室内機から出ているドレンホースを外してしまい、この接続部品でドレンパンの出口に直接つないでしまおうという安易な発想。
本来ドレンパン出口とそこにつながっている室内機用ドレンホースはねじなどでロックされて抜けないようになっています。
しかしこの部品を使うとロックできないので引っ張れば抜けてしまいます。
エアコンのメーカーによっては差さりません。
エアコン入れ替え時に長さが合わず短ければ継ぎ足す必要がありますがここでも問題が・・・
長年の使用で汚れて劣化し変形したホースにうまく接着接続できるのか?
ホースメーカーからしたらダメというでしょう。
またホースのメーカーが異なればこの接続部品も異なります。(若干径がちがう)
なのでもしこの部品が生産されなくなれば接続できなくなります。
さらに断熱ドレンホースにはメーカー名が出ていない。
どこのものが埋設されているのかわからないので接続部品もどれを使えばいいのか不明。
そもそもこの断熱ドレンホースは隠ぺい配管用に作られているわけではないと思います。
― やっぱり隠ぺい配管はやめたほうがいい ―
先々を考えれば隠ぺい配管がいかに無謀なことかが見えてくると思います。
どのように完璧な配管をしたとしてもいずれは使用できなくなります。
また配管工事から10年以上経って初めてエアコンを設置するということもあると思いますが、ルームエアコン用に先行配管しても気密試験はしておらず、もちろん途中につぶれがないかの試験もしていません。
設置してみて不具合が見つかるなんてことも。
そうなると責任はだれが・・・
エアコン入替えに際しお金に糸目をつけず壁や天井を壊して配管し直すほどの覚悟があれば構いませんが。
― 中にはやむを得ない場合もある ―
マンションなどで外壁に面していない中間にある部屋ではどうしても隠ぺい配管せざるを得ず、新築時にすでに埋設されているケースもあります。
そのような場合は通常、数回はエアコンを入れ替えられるような配管をしています。
建築のデザインをする方は自身の作品にエアコンのパイプが通ることを嫌うのだと思いますが、発注する側がそこを見極めて判断するしかないと思います。
エアコンは10年位で寿命を迎えるのでそのことをよく考えて設置方法を検討しましょう。
なお当店では隠ぺい配管への設置工事の際は事前に対応可能か判断のため下見に伺います。
http://kato-aircon.com/
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