意外に大きい電圧降下
電気を流すためにある電線。この電線で電気を消費していることをご存知でしょうか。
特にエアコンのように流れる電流が大きい機器は電線での消費電力が増えます。
電線に使用されている導体の材料は軟銅で、その素材がもつ抵抗率(電気の流れを妨げようとする率)は20℃で1/58[Ω㎟/m](太さ1㎟で長さ1mあたり約0.01724Ω)です。
数字だけ見るとたいして大きくないと思われるかもしれません。
ルームエアコンでブレーカーから配線される電線は、
このようになっています。
ブレーカー→電線→コンセント→プラグコード→室内機→室外機と接続されて電気を使用します。
ブレーカーとコンセントの間はVVF以外のものが使用されている場合があります。(IVなど)
エアコンの場合、電力のほとんどを室外機で消費します。
そこで例としてブレーカーからコンセントまでの電線が10m、室内機と室外機間の電線が10mあったとして、エアコンに最大電流20Aの電流が流れているとします。(実際には室外機には最大19A程度だと思います。)
計算が複雑になりわかりにくくなるため、室内機(の電流)とそこから出ているプラグコードも細く接触抵抗などで電圧降下の大きい部分ですが今回は無視して考えます。
○ このとき電線上に加わる電圧は、
まず太さ1㎟で長さ1mの電線の抵抗が1/58Ωなので直径2㎜では
約5.49×10^-3[Ω](0.00549Ω→5.49mΩ(ミリオーム))。
そしてブレーカーとコンセント間の10m、室内機と室外機間の10mの合計20mの電線ではどうなるかというと・・・
ここで勘違いしていけないのは電線が20mだからといってそのまま20倍したのではまちがいです。
電線は往きと帰りの2本で一組になり回路として構成されますので実際の電線長は2倍の40mとなります。
上の抵抗に20Aの電流が流れた時に加わる電圧はオームの法則より
約4.39Vです。
電線上には4.39Vの電圧がかかります。
そしてこの4.39Vはエアコンの力率とは関係なく電線で熱に代わって無意味に消費します。
どの程度電線で消費しているかというと、
なんと87.8W・・・
なお式の書き方は思いついたまま展開しましのでご了承ください。
これだけの電力が電線から熱として放出されます。もったいないですね。もちろんこれは最大電流の時でインバーターでコンプレッサーの回転が落ちてくると電流が減り電線での電圧降下(消費)も少なくなります。
なおこれらは20℃での条件なので電線から発生する熱により電気抵抗はさらに増え、10℃上昇すると4%ほど上がります。そうなるとまた電圧降下と発生する熱が増えてしまいます。そのため電線はできる限り放熱よく配置するのが望ましいと言えます。
このようなことから部屋に対して小さな能力のエアコンをフル回転で長時間運転させるのは効率が悪く、そのほかに力率も悪くなる傾向があります。(力率については機会があれば触れます。)
電線が太くなればその断面積に比例して電圧降下も少なく済みますが、材料費や施工性の問題もあります。
たまに材料を節約(?)して直径1.6㎜の電線を使っているところも散見されますが、そうしたところはもっと電圧降下が大きくなります。
あまり電圧降下が大きいとエアコンからエラーが出たり止まったりと不具合が出る場合もあります。
常温超電導(常温で電気抵抗が0Ωになる)の素材が発見されて、しかも安価に使用できれば解決できるのですが・・・当面は夢の世界の話でしょうね。
http://kato-aircon.com/
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