インバーターエアコンとは・・・
インバーターエアコンをご存知でしょうか。
とはいっても現在のエアコンはインバーターがあたりまえで、昔使われていたノンインバーター機(定速機)は一部を除いて発売されていません。
そのためわざわざ“インバーター”を謳っている機種はないと思います。
私が学校を出てこの業界に入る前の年あたりからインバーターエアコンが東芝から発売され、他のメーカーではまだありませんでした。
しかしその室外機ときたら重いこと。28型(冷房能力2800kcal・当時はkWではなくkcal)で40㎏程度はあったと思います。
インバーターはまだあまり世間で知られておらず室外機や室内機に“INVERTER”と記され、ランプなどで現在の周波数も表示されたりしていました。
当時エアコン工事に行きそのお宅のおばあちゃんが出てきて
「そのクーラー(モノが)いいの?」
私「はい、インバーターですからね。」
「ふ~ん、インベーダーだかコンベーダーだか知らないけど。どうでもいいけど。」
(どっちもちがいますよおばあちゃん・・・)
なんて会話もありました。
その後、ナショナルが蛍光灯器具にインバーターを採用したり、他の家電品にも次々と搭載されて何でもかんでもインバーターといわれる時代になりました。
その後、インバーターは珍しくもなくなりあたりまえの装備となっていきます。
現在ではエアコンの動作説明をするときなど「インバーターの働きで・・・」といってもお客さまに伝わっていないなと感じることが多々あります。
そこで今回はインバーターとは何か、説明したいと思います。
(簡単にしようと思いましたができませんでした。)
まず電力会社などから受電して100Vコンセントに来ている電気は、
このようになっています。
縦軸は電圧。横軸は時間で左端が0、右端は周波数が50Hzの場合1/25秒(0.04秒)です。
(波形の作図には“十進BASIC http://hp.vector.co.jp/authors/VA008683/”を使用させていただきました。)
学校の授業でも習うことがあると思いますが、正弦波交流といってサインカーブを描きながら+側と-側に反転を繰り返しています。図では2回繰り返していますので2サイクルぶんを表示しています。
ご存知の方もおられるかと思いますが交流(AC)100Vというのは実効値(電圧の働きを直流に換算した値)で最大値(山のてっぺん)はその√2倍(約141.4V)です。
このままの電気を室外機にあるコンプレッサーへ供給して動力とするのが一定速で回る昔のエアコンです。コンプレッサーは電磁リレーによるONとOFFのみで、どうしても室温にムラがでて効率もよくありません。
また50Hzと60Hz(地域によります)ではコンプレッサーの回転数が異なるため冷房や暖房の能力も異なります。(60Hz地域のほうが能力が高い)
エアコンの仕様書に周波数ごとの能力や仕様が記載されています。
一部機種(ナショナル製)で50Hz専用、60Hz専用というものが存在しましたが、周波数が異なってもその地域の周波数専用機を使用することで同じ冷暖房能力を得られるようにした機種と思われます。もちろん周波数が異なる地域では使用できません。
ではインバーターエアコンはどうなっているのか・・・
コンセントから供給された100Vの電気は室内機を経由してそのまま室外機へ送られます。
これは室外機内部の電気部品です。
室外機内部の整流回路と平滑回路を通って
交流(AC)から直流(DC)になりました。
いったんこのように直流にします。これをコンバーターといいます。
正弦波交流最大値の倍電圧の約282V(無負荷時)がここから出力されます。理論値なので実際には電源の電圧や負荷などによって変動します。
そして次にインバーターが登場します。
インバーターは直流になおした電気をもう一度交流に戻します。
「オイオイなんでそんな面倒なことを」となりますが、こうしないとできないことがあります。
さきほどの大きな直流と電子回路で生成した小さなパルス波をパワートランジスタ(パワーモジュール)というものを用いて変換増幅することで三相交流を出力します。
これをインバーターといいます。実際には電子部品のスイッチングで波形を作っているため細かなギザギザがあります。
こうなるとわけわからなくなってきますが、コンセントは単相交流100Vでインバーターからでたものはエアコンでは三相交流(電圧は任意)です。
三相の電気を流すためには3本の電線が必要で、“U/V/W”で表示されます。
三つの相(位相)はそれぞれ120度ずつずれて(位相差)出ています。
なぜかというと、
この円盤は中心を軸に矢印の方向へ回転するとします。
赤、黒、青の印がありますがその間隔は中心から120度ずつずれて配置してあります。円盤を赤を手前にするように向きを変えて、回転させながら右に移動させていくとさきほどの三相交流の波形と一致します。
コンプレッサーなどのモーターを回す回転力を得るには最適な波形です。
そして波形の周波数を倍にすると、
この図は前の三相交流波形の周波数を倍にしたものです。
さきほどの円盤をこの波形に当てはめると前の波形よりも回転数が2倍となります。これこそがインバーターを使う理由で周波数を変えることにより自由な回転数(コンプレッサーの出力)を得られる方法です。
インバーターから出る周波数は電子回路で生成する小さなパルス波で制御できます。
早く冷暖房を利かすときにはコンプレッサーを高回転で回して定格よりも大きな出力を、そして希望温度が近づいてきたら定格よりも低回転にして温度ムラを少なく快適な状態を維持します。
電源側周波数が異なっていてもエアコンの大部分の電気を消費するコンプレッサーは同じ回転数を任意に得られ、全体の電気使用量もほぼ同じになります。そのため仕様書には電源周波数ごとの記載はありません。
3つの端子の周囲に“U/V/W”の記載があります。
なお“U”は隠れて見えていません。
インバーターは発売から30年以上、回路構成や方式の改良などはありますが使い続けられています。
かなり長くなってしまいました。簡単にまとめると快適で省電力に寄与するということでしょうか。
http://kato-aircon.com/
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