エアコンの構造

2018年2月16日 (金)

インバーターエアコンとは・・・

 インバーターエアコンをご存知でしょうか。

 とはいっても現在のエアコンはインバーターがあたりまえで、昔使われていたノンインバーター機(定速機)は一部を除いて発売されていません。

 そのためわざわざ“インバーター”を謳っている機種はないと思います。

 私が学校を出てこの業界に入る前の年あたりからインバーターエアコンが東芝から発売され、他のメーカーではまだありませんでした。
 しかしその室外機ときたら重いこと。28型(冷房能力2800kcal・当時はkWではなくkcal)で40㎏程度はあったと思います。

 インバーターはまだあまり世間で知られておらず室外機や室内機に“INVERTER”と記され、ランプなどで現在の周波数も表示されたりしていました。

当時エアコン工事に行きそのお宅のおばあちゃんが出てきて
 「そのクーラー(モノが)いいの?」
 私「はい、インバーターですからね。」
 「ふ~ん、インベーダーだかコンベーダーだか知らないけど。どうでもいいけど。」
 (どっちもちがいますよおばあちゃん・・・)
なんて会話もありました。

 その後、ナショナルが蛍光灯器具にインバーターを採用したり、他の家電品にも次々と搭載されて何でもかんでもインバーターといわれる時代になりました。
 その後、インバーターは珍しくもなくなりあたりまえの装備となっていきます。

 現在ではエアコンの動作説明をするときなど「インバーターの働きで・・・」といってもお客さまに伝わっていないなと感じることが多々あります。
 そこで今回はインバーターとは何か、説明したいと思います。
 (簡単にしようと思いましたができませんでした。)

まず電力会社などから受電して100Vコンセントに来ている電気は、
S100v_sin
このようになっています。
縦軸は電圧。横軸は時間で左端が0、右端は周波数が50Hzの場合1/25秒(0.04秒)です。

(波形の作図には“十進BASIC http://hp.vector.co.jp/authors/VA008683/”を使用させていただきました。)

 学校の授業でも習うことがあると思いますが、正弦波交流といってサインカーブを描きながら+側と-側に反転を繰り返しています。図では2回繰り返していますので2サイクルぶんを表示しています。

 ご存知の方もおられるかと思いますが交流(AC)100Vというのは実効値(電圧の働きを直流に換算した値)で最大値(山のてっぺん)はその√2倍(約141.4V)です。

 このままの電気を室外機にあるコンプレッサーへ供給して動力とするのが一定速で回る昔のエアコンです。コンプレッサーは電磁リレーによるONとOFFのみで、どうしても室温にムラがでて効率もよくありません。

 また50Hzと60Hz(地域によります)ではコンプレッサーの回転数が異なるため冷房や暖房の能力も異なります。(60Hz地域のほうが能力が高い)
 エアコンの仕様書に周波数ごとの能力や仕様が記載されています。

 一部機種(ナショナル製)で50Hz専用、60Hz専用というものが存在しましたが、周波数が異なってもその地域の周波数専用機を使用することで同じ回転数(同じ冷暖房能力)を得られるようにした機種と思われます。もちろん周波数が異なる地域では使用できません。

ではインバーターエアコンはどうなっているのか・・・

コンセントから供給された100Vの電気は室内機を経由してそのまま室外機へ送られます。
Img_0308t180215
これは室外機内部の電気部品です。

室外機内部の整流回路と平滑回路を通って
Dc282v
交流(AC)から直流(DC)になりました。

 いったんこのように直流にします。これをコンバーターといいます。
 正弦波交流最大値の倍電圧の約282V(無負荷時)がここから出力されます。理論値なので実際には電源の電圧や負荷などによって変動します。

そして次にインバーターが登場します。

 インバーターは直流になおした電気をもう一度交流に戻します。

 「オイオイなんでそんな面倒なことを」となりますが、こうしないとできないことがあります。

さきほどの大きな直流DCと電子回路で生成した小さなパルス波をパワートランジスタ(パワーモジュール)というものを用いて変換増幅することで三相交流を出力します。
3s_sin
これをインバーターといいます。実際には電子部品のスイッチングで波形を作っているため細かなギザギザがあります。

 こうなるとわけわからなくなってきますが、コンセントは単相交流100Vでインバーターからでたものはエアコンでは三相交流(電圧は任意)です。
 三相の電気を流すためには3本の電線が必要で、“U/V/W”で表示されます。

 三つの相(位相)はそれぞれ120度ずつずれて(位相差)出ています。

なぜかというと、
3s_enban
この円盤は中心を軸に矢印の方向へ回転するとします。

 赤、黒、青の印がありますがその間隔は中心から120度ずつずれて配置してあります。円盤を赤を手前にするように向きを変えて、回転させながら右に移動させていくとさきほどの三相交流の波形と一致します。
 コンプレッサーなどのモーターを回す回転力を得るには最適な波形です。

そして波形の周波数を倍にすると、
3s_sin_2
この図は前の三相交流波形の周波数を倍にしたものです。

 さきほどの円盤をこの波形に当てはめると前の波形よりも回転数が2倍となります。これこそがインバーターを使う理由で周波数を変えることにより自由な回転数(コンプレッサーの出力)を得られる方法です。

 インバーターから出る周波数と電圧は電子回路で生成する小さなパルス波で制御できます。

 早く冷暖房を利かすときにはコンプレッサーを高回転で回して定格よりも大きな出力を、そして希望温度が近づいてきたら定格よりも低回転にして温度ムラを少なく快適な状態を維持します。

 電源側周波数が異なっていてもエアコンの大部分の電気を消費するコンプレッサーは同じ回転数を任意に得られ、全体の電気使用量もほぼ同じになります。そのため仕様書には電源周波数ごとの記載はありません。

室外機内部のコンプレッサー
Img_0609tc180215

3つの端子の周囲に“U/V/W”の記載があります。
Img_0607t180215
なお“U”は隠れて見えていません。

 インバーターは発売から30年以上、回路構成や方式の改良などはありますが使い続けられています。

 かなり長くなってしまいました。簡単にまとめると快適で省電力に寄与するということでしょうか。

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2018年2月 3日 (土)

寒い日はエアコン(暖房)が効きにくい。

 ここのところ関東南部でも寒い日が続きますね。

 積雪のあった日などはエアコンの暖房を入れてもなかなか部屋が温まらないといったお宅も多かったのではないでしょうか。

 このような症状はエアコンの原理、構造からなるもので多くは故障ではありません。

 最近のエアコンは低温時の特性もよくなってきており、昔のように全く効かないなどというようなこともなくなっていると思いますが、外気温が下がればやはり暖房能力も下がります。

 エアコンは暖房をつけると室外機で屋外の熱を奪い、その熱を冷媒ガスに載せて室内機へ運び放出します。そして室内で冷やされた冷媒ガスはまた室外機へ戻って屋外の熱を奪うという、熱を運ぶこと(ヒートポンプ)を連続しておこないます。

 当然、寒い日は屋外の気温が0度前後で、そこから熱を取り出すわけですから効率が落ちます。
 特に雪の降った日は空気中の湿度も高いため、熱を奪われ冷えた室外機の熱交換器(室外機裏のアルミフィンでできたところ)はマイナス温度になり凍り始めます。

 熱交換器が一旦凍ってしまうと室外機ファンの送風量も少なくなり、更に熱交換効率が落ちてどんどんと凍り付いて熱が取り出せず、エアコンはその状況を察知して除霜運転にはいります。

 除霜運転は機種により動作が異なるかもしれませんが、多くは冷媒ガスの流れを冷房運転に切り替えて凍った室外機の熱交換器に暖かいガスを送り込み溶かします。(室内機のランプなどで除霜運転中を表示します。)しかしその時には室内側の送風は止まり室内熱交換器には冷たい冷媒ガスが流れますので冷たい空気がゆらゆらと降りてきて室温は下がってしまいます。この除霜は数分から十分程度で終わりまた暖房運転を開始します。

 外気温が非常に低く、除霜運転を数十分間隔で繰り返してしまうと部屋は十分に暖まらないという状況になります。

 雪や雨の直接あたるところに室外機があると特にその影響が出やすいと思います。

 また朝晩冷え込みの厳しいところ(神奈川では西部地域)では除霜して溶かした水が室外機の底板に溜まり再度凍りつき、その氷がファンに接触し回転できず熱交換不足で暖房が全く効かなくなることもあります。
 寒冷地などでは室外機の底板に取り付ける排水ホースは接続しません。ホース内で水が凍って詰まってしまうためです。
 なお一般的に室外機用の排水ホースはその接続部品も含めて必要でなければ取り付けないほうがよいものです。

 暖房能力が部屋の大きさ対して少ない場合や部屋の断熱性能が低く窓や壁から放熱する量が多いと、普段はさして問題なくても極端に寒い日は暖房が効かなくなることもあります。

 冷房の場合は室温30度程度から25~28度へと数度下げれば涼しく感じますが、暖房は室温10度前後から22~25度へと十数度上げなければなりませんのでその分能力も必要になります。

 エアコンが気温に大きく左右されるのはヒートポンプの弱点といえるところです。暖房の不足した分を他の暖房機器で対応しているお宅もあります。(ただし冷房の能力不足はどうしようもありません。)

 それでも昔のエアコンと比べれば格段に能力は向上しています。

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2018年2月 1日 (木)

懐かしいバルブ

室外機のバルブです。
Img_1223t
上のバルブは二方弁、下は三方弁といいます。

この画像の三方弁を見て「オッ」と思われたかたは昔からエアコンに携わっているのでしょう。

一方、現代の室外機の三方弁は、
Img_0207rtc2
このような形をしています。

三方弁は室外機本体と室内機に向かう銅管接続部、それとサービスポート(真空引き、ガスチャージ、圧力測定等をおこなう)の三方向に流れます。バルブの開閉はスピンドル部(六角レンチ)で行います。

バルブが、
・全閉時には室外機側は遮断され室内機側とサービスポートの間だけ開きます。(緑線)
・全開または中間の位置では三方向すべてが開きます。(赤線)
中間の位置では開度が少ないため流量も減りますので中間の位置では使用しません。

サービスポートは室外機側、室内機側の両方もしくは室内機側と常時開いているのでこのままではキャップを外すとガスが放出してしまいます。そのため中にバルブコア(逆止弁のようなもの)が付いていて気密を保っています。

保守用のチャージングホースにはバルブコアを押す機構が付いていますのでホースを接続するだけでサービスポートは開きます。

バルブコアを緩めます。(通常は必要ありません)
Img_0210rtc

バルブコアが出てきました。
Img_0211rtc
自動車のタイヤの空気を入れるところとそっくりです。自転車でいえば米式バルブですかね。先端のピンを押すと開きます。

このタイプの三方弁の特徴として、
Img_0207rtc
室内機側の接続口とサービスポートが一直線上についています。

でははじめに見たバルブは、
Img_1223tc
ずれていますね。

手前側に見えているサービスポートにはバルブコアは付いていません。使い方を知らないとガスが漏れてあわてて右往左往することになります。

このバルブの動きは、
Img_1226tc
このようになっています。

バルブが、
・全閉の時は室内機側とサービスポートのみつながります。(緑線)
・中間の時は三方向すべてがつながります。(黄色線)
・全開の時は室内機側と室外機側のみつながります。(赤線)

室内機側だけ真空引きやガスチャージする際にはバルブは全閉し、室外機もまとめて行う場合は中間位置。そしてガス圧計測は全開位置から少しだけ閉める(少しだけサービスポートを開く)といった具合です。

通常使用時はもちろん全開です。

いまではなかなか目にすることのなくなったバルブです。

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2018年1月30日 (火)

昔のエアコンは長持ちした。(電気回路)

お客さまと「昔のエアコンは長持ちした。」、「実家のエアコンはもう何十年も使っている。」など現在のものと比べて昔のエアコンのほうが長寿命であったという話題がよくでます。

その理由のひとつとして構造が単純であったことがあげられると思います。またこれが一番の理由になるかもしれません。

先日、旧型のエアコンを撤去する機会がありましたので、その電気回路を見てみます。

まずは端子台から、
Img_1227tc
電線の接続の仕方がちょっとアレですがそれはさておき4本の線で接続されています。

この線は室内機側の端子台へも接続されています。

現在のインバーターエアコンではごく一部を除き3心(3本線)で3本のうち2本を電源用交流100Vまたは200V、残り1本と電源用の1本を共用しシリアル信号で内外機の連絡や指令をやりとりしています。

撤去する室外機の電気回路図をみると、
Img_1228t
すごく単純な回路です。

上のほうにある“SAP-・・・”なつかしいサンヨー製のエアコンです。電子制御基板はありません。

実際には室内機が接続されています。
Img_1228tc

わかりやすくすると、
Img_1228tc2
各端子が何につながっているか記載しました。

コンプレッサー、ファン、四方弁のそれぞれ単純に電灯線100V(AC100V)を印加すれば作動します。

室外機を別のメーカーや機種に変えても配線を合わせれば動きます。そのため昔は日本で廃棄したエアコンを海外でいろいろ組み合わせて再使用している話をよく聞きました。

現在のインバーターエアコンでは内外機間のシリアル信号が機種ごとに異なっていてこのようなことはできません。保護装置も盛り沢山で異常があるとすぐ検知してエラーを出して停止します。一定時間内に同じ異常を何回繰り返すとエラーを出すという場合もあります。

しかしこのエアコンは
Img_1228tc3
オーバーロードリレーだけです。

ファンモーターの内部は温度ヒューズが内蔵されていると思いますが、そのほかはありません。

このオーバーロードリレーは過電流を検知するのではなく、コンプレッサーの上部に貼り付いていて高温異常を検知するもので、ガス不足などで温度が異常に上昇した場合に機械的なバイメタルスイッチのようなもので回路を遮断します。そのため一度このリレーが働くと冷えて復帰するまでの数時間は起動しません。コンプレッサーが動かず冷暖房が効かないだけでエラーも出さず室内機は通常通り運転します。

点検で早く冷やすためにうちわでコンプレッサーをあおいだ記憶が懐かしい・・・

いまでは半導体のサーミスタがコンプレッサーの吐出管についていて高温異常を検知し室外機のマイコンからシリアル信号で室内機のマイコンへと伝えますので、作動すると室内機がエラーを出し停止します。

昔(ノンインバーター)のエアコンは部品点数が少ないため故障も少なく、なにより室外機に電子制御基板が搭載されていないことが長持ちに寄与したのだと思います。

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2017年10月21日 (土)

暖房もガス(冷媒)を使います。

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ここのところ急に寒くなりました。そろそろ暖房をつける機会が出てくる季節です。

ほとんどの方は冷房では冷媒であるフロンガス(現在発売されているエアコンは代替フロン)を使用していることをご存知で、冷えなくなると”ガス不足かな・・・”と思われるようです。

しかし暖房もフロンガスを使用していることは知らない方もいて、点検で「ガス不足ですね。」というと”ハァ?”という表情をされたりします。

どうも電気(電熱)ヒーターかなにか別の方法で暖めていると思っていたようです。

都市ガスなどを使用してボイラーで温水をつくり暖房する器具もありますが現在ではほとんど見かけなくなりました。昔よりも電気式エアコンの暖房能力が格段に高くなり、ガスや灯油に比べ燃費もよいためです。

では”どうやって暖房をしているの?”と思われるかもしれませんが冷房の原理と全く同じです。そもそも冷房も冷媒を使用して熱を運ぶ”ヒートポンプ”という方式ですので、冷房は熱を室内から奪い室外へ、暖房は熱を室外から奪い室内へとポンプを使って運ぶように移動させています。

冷房と暖房の切り替えは弁により冷媒の流れを切り替えておこなっています。

このようなことから電気式のエアコンは冷媒のフロンガスがなくなると冷房も暖房も効かなくなりますので、今年冷房が効かなかったお宅では暖房も効かなくなっているかもしれません。

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2015年4月23日 (木)

エアコンはどうして冷えるのか・・・

 エアコンはどうして冷えるか知っていますか?

 わたしも若い頃はよくメーカーの講習などにいきエアコンが冷える原理を習いました。でもそこで教えてくれるのは「注射を打つ前にアルコール消毒をしたときにスーっと冷たく感じるでしょ」とか「暑い日に水を打つと涼しく感じるのと同じ」とか、ずいぶんと簡単に教えてくれたものでした。(これがエアコン屋用の講習ですがサッパリwobbly

 聞くところによるとお客さんに質問されたエアコン屋さんがこれをそのまま言っているとか・・・

 だいたいの原理は、
Photo
 見にくいかもしれませんが、冷媒(フロンガス等)の流れを図にしてみました。

 上の図では冷媒が右回りに循環しています。上部にあるコンプレッサーに吸入された冷たくて圧力の低いガスは圧縮されることにより熱くて圧力の高いガスになります。

 そこから室外の熱交換器(車のラジエターみたいなもの)に行き、冷やされる(その分室外には熱風が出ます)ことで冷媒の温度が下がると同時にガスが凝縮されて液化します。圧力が高く温度が高いため冷やすと凝縮しやすい状態です。ここでは圧力はまだ下がりません。

 つぎに減圧弁で圧力が下げられると冷媒が冷たくなり始め蒸発しやすい状態になります。コンプレッサーとまったく逆の役目をしていますが、構造はただ細いところを通過(減圧)するだけです。昔のエアコンではただの細いストローのようなキャピラリーチューブと呼ばれるものでしたが、現在では電子膨張弁という電子制御のものが主流です。

 減圧されある程度ガス化が始まった低温低圧の冷媒は蒸発しやすい状態となり、室内の熱交換器で温められ(室内にはその分冷風がでる)てガス化します。
あとはコンプレッサーに戻りグルグル回っているだけです。

 通常のルームエアコンではコンプレッサー・室外熱交換器・減圧弁の3つは室外機内にあり、室内機は室内熱交換器のみとなります。(再熱除湿機能などを除く)

 どうでしょう・・・おわかりいただけたでしょうか?説明が下手ですみませんcoldsweats01

 そうそう、「冷房はわかったけど暖房は?」となるかもしれませんね。・・・暖房は室内機と室外機を入れ替えれば良いわけですが、そんなこといちいちできるわけがありません。室外機の中に四方切替弁というものが付いていて冷媒を逆流させ、コンプレッサーから出た高温高圧のガスを先に室内機側にもってくることにより可能となっています。そのためガスが無くなると冷房も暖房も効かなくなります。

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